こんにちは、銀猫です。
この記事ではインド・ダージリンのストライキについて、現地の状況を調べた結果をお伝えします。
9月に中止宣言がされた後の現地の様子について、海外のニュースなどをもとにしてまとめています。
茶園で働く方たちのこと、茶園のこと、日本ではあまり報道されていない情報を個人で集めた記事です。
ダージリンオータムナルのことや2018年のダージリンのことが気になっている方も参考にしてみてくださいね。
それでは、9月29日の中止宣言の実態からみていきましょう。
9月29日 ダージリンストライキ中止宣言
2017年9月29日、ゴルカ人民解放戦線の指導者ビマル グルン氏のビデオメッセージによって、ダージリンストライキ終了が正式に宣言されました。
この時点で、6月前半からおよそ3ヶ月ストライキが続いたことになります。
日経アジアレビューには、今後の方針についてダージリン茶協会会長カウシク・バソーさんのインタビューが掲載されました。
記事内では「茶園の回復は春以降になるだろう」と言われています。
日本でも朝日新聞などが報じていますが、あまり詳しくはない印象です。
日本のお茶専門店ルピシアの公式サイトからも状況が伝えられました。
約3ヵ月の間、放置されていた茶園でふたたび紅茶を製造するためには、約1~1.5ヵ月の整備期間が必要です。通常10月下旬から11月にかけて収穫される秋摘み(オータムナル)以降の紅茶の製造状況については、追って続報をお知らせいたしますが、例年と比較して収量は少なくなることが予想されています。(公式サイトの記事より引用)
そして、重要なのは現地の状況が改善されたからストライキが中止されたわけではなかったことです。
抗議によって何も変わらず、財産である茶園が放置されて荒れ、収入源が絶たれていったことによるやむをえない中止だといえます。
11月時点での各紅茶専門店の状況は?
11月上旬にルピシアの店舗に伺った際、ダージリンオータムナルの入荷見込みを訊いてみました。
店員さんも入荷についてはっきりとしたことは分からない、ということでした。
ただ「恐らく無理」とも言われなかったということは、バイヤーさんが奔走している最中かな…?と思います。
ムジカティーさんは公式フェイスブックの記事によると、
11月15日時点でオータムナルのサンプル(マーガレットホープ茶園)を入手できたようです。
ただし、価格の高騰が気になりますね…。
お茶好きさんの間の噂では、他の紅茶専門店でも12月上旬から中旬頃には入荷・販売されるのでは?と予想されています。
値段の高騰と入荷量の大幅な減少は確実だと思われるので、福袋などにオータムナルは入らないかもしれませんね。
ダージリンの茶園労働者の4割がネパールへ
ダージリンの各茶園の状況としては、ストライキ後に労働者のおよそ半数を失うことになったようです。hindustan timesの記事
ストライキによって何も状況が変わらず、ストライキ中止後も対立が深まった結果のようです。
現地では、グルカ人の家が焼かれるなど深刻な事件が起きています。
#ダージリンストライキ その影響はやはり簡単では有りませんでした。ダージリンでは、茶園労働者の40%が戻ってきていないそうです。https://t.co/LzfzX68Tcj
茶畑は雑草に覆われ、連鎖的な被害により回復には1年以上かかりそうです。— 堀田@ TEAS Liyn-an (@Liyn_an) October 28, 2017
紅茶専門店・ティーズリンアンの堀田さんもツイートで言及されています。
ダージリンに残った方々は、かなり厳しい状況になっていると思います…。
ネパールで何をするの?
ダージリンからネパールに移った方たちは、恐らくネパールの茶園で働くのでしょう。
ネパールにもダージリンに負けないくらい質の良い紅茶を生産する茶園があります。
たとえば、ジュンチャバリ茶園やミストバレー茶園などの良質な紅茶が日本にも流通しています。
今年のネパールの紅茶はダージリンストライキの影響でやや需要が高まり、値上がりしたといわれています。
しかし、それでもジュンチャバリ茶園のセカンドフラッシュは40g1,850円です。
ダージリンに比べるとかなり手頃な印象ですよね。
質の違いというよりは、ダージリンの名声(知名度・ブランド価値)に押された結果と人件費の安さによるものだと思います。
今回のストライキによって、ネパールの紅茶のことが見直されるかもしれません。
2017年のジュンチャバリ茶園のセカンドフラッシュの通販ページ(ティーズリンアンさん)
ダージリンの茶園労働者の多くはネパール行ったようです。
ネパールでは2013~14年の8,786haから2015~16年には16,245haと茶園面積が急増してます。
そんなに急に増やせるのか疑問ですが、その茶園の労働力として #ダージリンストライキ は格好のチャンスだったでしょう。
https://t.co/5qDG6vti3f— 堀田@ TEAS Liyn-an (@Liyn_an) November 18, 2017
ジュンチャバリ茶園も今、茶園面積を増やそうとしています。
ネパールはダージリンと同質の紅茶を作れる地域ですが、ダージリンの名声に押されて安くなっていましたが、 #ダージリンストライキ の影響でネパールの紅茶の価格も上がり、労働者も移住し、ネパールにとっては幸運な出来事でした。 https://t.co/HzY1QNBRTz— 堀田@ TEAS Liyn-an (@Liyn_an) November 18, 2017
ネパールの茶園視点では「ダージリンで培った経験と技術を持った茶園労働者が移住してくれる」ということになります。
ネパール側にとって、これはかなり嬉しい出来事になったと思います。
単なる労働力ではなく「経験豊富な技術者」が来てくれたので、生産量だけでなく質の上昇も見込めそうです。
一方、ダージリンでは茶園労働者4割を失ってしまいました。
春までに荒れた茶園を手入れして回復させつつ人材を募集・育成しなければならない状況になりそうです。
ダージリンの茶園の状況を整理すると、
- 2017年の春の茶葉は問題なく出荷できた
- 2017年の春から初夏の茶葉をギリギリ出荷できた茶園もある
- 3ヶ月以上茶園の手入れが行えなかった
- 茶園労働者の4割を失った
- 2017年秋の茶葉の状況は不明
という状態になっているようです。
茶園の皆さんの収入を考えると、比較的高値がつきやすいファーストフラッシュやセカンドフラッシュを確実に生産したいところだと思います。
状況的にも、オータムナルを収穫・出荷できる茶園はごくわずかになるかもしれません。
ダージリンストライキの現状について 終わりに
ダージリンストライキについては日本ではあまり報道されていませんでした。
また、中止宣言のニュースを見て「平和に解決したんだな」と思っている方もいらっしゃるようです。
なので、今回の記事では現地の情報を中心に状況を整理してみました。
茶園によっては2017年のファーストフラッシュ以降、収入源が絶たれている可能性もあり、お茶好きとしてとても心配です。
現状では、今年の夏に日本で名前を見かけなかった茶園がいくつかあるように感じています。
もしダージリンオータムナルが入荷するならば、茶園への応援という意味も込めて購入したいと思っています。