【3年前のダージリンセカンドフラッシュ】経年変化は?実際に飲んでみた

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こんにちは、銀猫です。
今日は日頃気になっていたこと・巷で噂されていることを個人で試してみよう!という目的で記事にしてみました。

今回気になったのは「ダージリンセカンドフラッシュはどんな風に経年変化するのか?」です。

SNSをみていると「福袋で手元に来たちょっとお高めの夏摘みのダージリン、飲む機会を見失っていつの間にやら年数が…」ってことはお茶好きさんのあるあるみたいですね。

賞味期限を過ぎた紅茶を飲むか迷っている方も多いようなので、今回はあえて!新茶ではないダージリンセカンドフラッシュを購入してみました。
どんな風に風味が変化しているのか?飲んでみてどう感じたか?をレポートします。

寝かせることを前提にして作られている普洱茶にドハマリしているので「そもそも寝かせる向きのお茶って?」ということも少し説明していきますね。

 

この記事を書いたきっかけ

まず、お茶好きさんのSNSでよく見かける話題として「賞味期限(2年)をオーバーした茶葉をどうするか問題」があります。
福袋などで思いがけず手に入ったり、セールなどでまとめ買いしたお茶が棚の奥で忘れ去られて…という状況があるようです。
とっておきのお茶ほど特別な機会に飲みたいな!って大事にしまい込んでしまう感覚、私にもよくわかります。

 

表示されている賞味期限をオーバーしているので「これ飲める?」って声が挙がったり。
作られてから随分経ったことで「風味が変わっちゃった?」と惜しむ声も見かけます。

最近は作られてすぐ飲むのではなく少し寝かせておく陳茶も流行っていますが、普洱茶(20年は寝かせたい)にどハマリしている私から見ると「寝かせるのもお茶によって向き不向きがあるよね…」と感じます。
年月で抜けていく香りと味があるので、ただ適当に寝かせればすべてのお茶がおいしい陳茶になるわけではないんです。
寝かせることでプラスに転じるような成分がほとんどなければ、ただ風味がスカスカの茶になってしまいます。

せっかく陳年の茶にハマって陳香がわかるようになってきたので、

  • 年数が経った紅茶を飲んでも平気かどうか(腹痛などはないか)
  • 陳香など陳年茶の特徴は出るのか
  • 新茶のときと風味は変わるのか
  • ダージリンセカンドフラッシュは寝かせるのに向いてるのか

を個人的に確認してみました。

検証に使うダージリンセカンドフラッシュ

今回の検証に使うのは、紅茶専門店Uf-fuさんの「シーヨック茶園DJ-71 2021セカンドフラッシュ」です。
残念ながら新茶時にこのロットを飲めていないのですが、シーヨックは私の推し茶園なのである程度ここの製茶の型と特徴は把握できています。

買い付け時の紹介を見ると、シーヨックが得意とする典型的なマスカテルチャイナ型だったようですね。
葉の色からみると、近年特に増えている少し青みを残した仕上げタイプと思われます。

今回購入したのはティーバッグタイプの商品です。
お店保管なので個人宅ほど年月以外の影響を受けておらず(個人宅ではタンスや家の匂いがついたり・家庭での料理の匂いがつくことがあります)検証向きの条件です。
袋詰前はどうなっているか不明ですが、購入時は大容量のアルミの遮光袋に入れてありました。
量が少ないと風味が抜けやすいのでたっぷりまとまった量があるのも陳化の観測向きですね。

価格は、新茶時にティーバッグ6個入り1200円だったようです。
ティーバッグ1個あたりの茶葉は2gのようなので、茶葉50gだと5000円くらいでしょうか。
ダージリン夏のなかでもなかなか高値のロットといえます。

実際に淹れてみた

紅茶専門店UF-FUさんの推奨抽出条件は「ティーバッグ1個に対して水300-400mlの割合/3~5分抽出」です。(一般的な条件と比べると少し薄め)
ティーバッグタイプなので、ティーポット抽出・カップ単体抽出の両方で試しました。

抽出中はやや香ばしさのある甘い香りがしています。正統派のチャイナマスカテルです。

カップでの水色は比較的明るく、乾いた茶葉の印象と一致します。
年数が経った現在、激しく表面に果実香が出るタイプではなく、ナッツ混じりの落ち着いた果実味を口の中で長く楽しめる紅茶になっていました。

今は落ち着いた風味になっていますが、当初はやや青みある仕上げで、華やかなタイプだったのかも?と思う要素がところどころに見られます。
果実香やナッティな風味も角がとれたように弱くなっていて、インパクトや鮮やかさはあまりないですね…。
強く抽出すると、ネロリのような印象の青み・渋みが感じられます。

茶殻を観察すると、青みを残して仕上げたダージリンセカンドフラッシュによく出るすーっとした花香が微かに残っています。
葉底を見ると「新茶のときはもう少しトーンの高い果実型だったのではないか?」と思いました。

 

3年前のダージリンセカンドフラッシュはどう変わったのか?

 

今回飲んだシーヨックの夏摘みは鮮やかなマスカテル香というより、蜂蜜のような印象の穏やかな甘みを強く感じました。
全体としてオータムナルのような落ち着いた雰囲気になっていて、(葉底の色合いからすると)年月による変化らしいと思われました。

香水でもより軽い層の香りはすぐに消えてしまうように、軽い花香やシトラス系の軽い果実香が抜けてしまったために全体のバランスが変わったのかもしれません。
(※ダージリンセカンドフラッシュの複雑な風味はマスカテル香のみで構成されているわけではない。果実型でも周辺をさまざまな花香が支えている)

一方で、普洱茶に出るような明らかな陳香は出ていませんでした。
10年くらい寝かせれば変わるのかもしれませんが、元々の茶樹の種類も製茶方法も異なるため、転化する成分が十分にないのではないでしょうか。

ティーバッグ40個分をほとんど飲みきったのですが、保管環境がしっかりしていたおかげか、お腹を壊すなど体調を崩すことはまったくありませんでした。
個人宅で開封済みのものの場合また事情は異なると思いますが、お店保管や未開封の状態であれば法定の賞味期限を多少オーバーしていても過度に恐れる必要はなさそうです。

 

ダージリンセカンドフラッシュは寝かせるのに向いてるのか

中国茶の「寝かせておいしくなる茶」の考え方をインド紅茶に流用すると、比較的寝かせるのに向いている茶はこんなタイプになると思われます。

  1. 製茶時の火入れが強い茶(重焙煎)であること
  2. 元の風味が強く、どっしりした味わいの茶であること
  3. 保管環境がよいこと

1に関しては紅茶分野ではあまり意識されにくいようですが、烏龍茶でも軽焙煎・中焙煎・重焙煎があります。製茶の具合による違いであり、茶の中に残っている水分量の違いと言えます。
近年のダージリンセカンドフラッシュの製茶傾向では、火入れは比較的軽いものが流行しています。
覚えがある方も多いと思いますが、ダージリンの夏摘みでも春に近い青みのあるロットが増えていますよね。一昔前と比べると、全体としても青い傾向があります。
こういった軽~中焙煎程度の茶は、マイナス方向に変質しやすいので寝かせるのにはあまり向いていません。保管しているうちにカビが生えてしまうリスクもあります。

2の風味の要素は1つ目の要素とも関連していますが、現在ダージリンセカンドフラッシュで流行っている風味は軽やかな花香型・軽やかな果実香型のようです。
今回飲んだシーヨック茶園ももともと鮮やかなチャイナマスカテルが得意な茶園ですが、近年はより軽やかで花香混じりの風味にシフトしてきています。

製茶だけでなく茶樹の高齢化や植え替えなど栽培側の事情も関係しているようなので、この先この傾向がガラッと変わる期待は薄いです。
香りの性質として軽やかなものは揮発が早く抜けていきやすいため、まず寝かせるのには向いていないと言えます。
また、陳化には転化していく成分も必要なので元の味わいに厚みがある、強い茶が望ましいです。

最後はほとんどおまけですが、保管環境も重要な要素です。
ジメジメした場所やキッチンの食器棚に茶を保管しておけば、湿気や料理による水蒸気、油や料理の香りを吸ってただ劣化していくだけです。
元々寝かせる用に作られた普洱茶でさえ、このような場所に保管されていた餅は凶悪な味わいになっています。(端的に言うとお腹を壊します)
もしも、このような場所に長年放置していた開封済みの紅茶をみつけたら、飲まないほうがいいでしょう。どうしても飲むなら少量からです。

茶の陳化について「密閉か空気に晒すか?」を書き始めるととても長くなる上に巨大な論争に巻き込まれるのでここではやめておきますが、個人宅であれば「カラッと乾燥している場所に保管されていたもの」「封を切らずに保管されていたもの」がいいでしょう。

総評

おいしい陳茶にはほかにも様々な要素がありますが、今回の結果としては、ダージリンセカンドフラッシュ(2020年代~)には寝かせておいておいしくなる要素はあまりないように見えます。
特徴的なマスカテル香も経年でやや飛んでしまっているので、お気に入りのロットがあっても買い置きはせずさっさと飲みきってしまったほうが風味を十分に楽しめそうでもあります。
風味の好みとして穏やかな味わいが好きな方ならいいのかもしれませんが……それならオータムナルを購入すればいいのではないでしょうか。

ただし、適切な保管環境であればダージリン特有の風味はやや弱くなりつつはありますが感じられますし、お腹を壊すこともありませんでした。
「寝かせておく用」は不要としても、うっかり寝かせてしまったダージリンセカンドフラッシュは未開封なら大抵は飲んでも大丈夫そうです。自己責任にはなりますが。

今回は入手できなかったので試せませんでしたが、2010年代のどっしりチャイナ型(できたては火入れ強すぎない?くらいのロット)なら火が落ち着いてむしろ飲み頃ということもありそうです。

3年経過したダージリンセカンドフラッシュの茶葉や風味を観察するのは、なかなかおもしろい経験になりました。
手元にある「積んでしまった茶」を飲む際は今回の記事のように「できたてはどうだったのか?」「どう変化したのか?」を観察してみても面白いかもしれません。
購入時に飲んだことのあるお茶で、自分の感想や記録が残っていればより興味深いものとなるでしょう。お腹を壊さない程度に色々飲んでみるのも楽しくてオススメですよ!

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