こんにちは、銀猫です。
今日は21世紀の東インド会社のロイヤルブレックファーストを飲んでみました。
今回も、いつも通り淹れ方・茶葉の雰囲気・おすすめの飲み方などを紹介していきますよ。今回はティーバッグタイプを購入してみましたが、香り・味ともにしっかりしていて「紅茶の甘み」が好きな方にはとてもおすすめできそうです。
ただし、少々入り組んだ事情がありそうなので前提となる会社の成り立ちや現在の様子なども紹介していきます。
この東インド会社は何者なのか?
日本のメディアなどでも紹介されていますが、簡単に「東インド会社」と書かれている記事が多かったです。実際に購入して使用されているロゴを見ると、どうやらイギリス東インド会社(EIC)のようですね。
そもそも、東インド会社とは?という人のためにざっくりおさらいしておきます。
- 1600年にロンドンの商人たちによって誕生
- エリザベス1世の承認を得て、アジア(インド以西)との貿易を独占
- オランダ東インド会社(VOC 1602設立)など、ヨーロッパ諸国が追随
- 1757年以降、事実上のインド統治機関へと変化していく
1857年のインド大反乱によって権威失墜 - 1858年に解散
簡単に言うと、国の許しを得て貿易を独占していた株式会社です。(国営企業ではありません)
イギリス東インド会社は中国やインドで茶葉を買い付け輸送する役割も独占していました。
また、18世紀に入ってからは当時植民地になっていたインド統治を任されるという一面もありました。たとえば、茶の歴史において「アッサム種発見および栽培の功績」で知られているブルース兄弟も名目上は東インド会社の軍人という扱いで現地入りしていたようです。
色々な国の「東インド会社」がありますが、イギリスの他に特に日本と交易があったのはオランダ東インド会社でしょうか。美術館の展示でもVOCのマークが刻印された里帰り品を見かけることがあります。EICとVOCは全く別なので注意が必要です。
解散したはずのイギリス東インド会社が復活した理由
「イギリス東インド会社は1858年に解散」という歴史を知っていると、ではこの茶を販売している東インド会社は何者なのか?と思いますよね。
これについてさらに調べてみたところ「2023年現在の東インド会社」は、どうやら2010年にインド出身の実業家サンジブ・メフタ氏による食料品および雑貨の卸売会社のようです。
とはいえ、勝手に東インド会社と名乗っているわけではなく、現代まで残っていた株主たちおよそ40名から株を買収するなど準備期間を経ています。
現在はイギリス当局の許可も得て会社名を名乗っているそうですが、歴史的な会社かつ「そもそもロンドン商人が連合で運営していたものだよね?」という理由での抗議もあるようで、今後の展開は不明のようです。
まとめると、正当に東インド会社を名乗るための手続きはしていますが、以前の東インド会社とは別物と思っていいです。
東インド会社 ロイヤル・ブレックファーストってこんな感じ
公式(日本代理店)の説明を引用してご紹介します。
OP、BOPのブレンド。渋味はやや強い、濃厚さがある。香りはオーソドックス、セイロン系に近くインド茶の個性がやや弱い。日本人向きの風味に仕上がっている。水色は深い赤色。日本の軟水で入れても渋味が程よく、あまり濃くならず英国よりむしろ日本に合う。
また、メジャーなブレンドであるロイヤルブレックファーストの成り立ちと会社との関わりについても紹介がありましたので引用しておきます。
1664年、東インド会社がチャールズⅡ世に贈り物として献上したことにより、ロイヤルの名が付けられました。東インド会社の船が帰帆した際、国王に献上するべき贈り物(通常は珍しい鳥や動物)の準備がなされていないことに気づいた宮廷の役人が、急遽代替品として2ポンドのお茶を献上。これが宮廷でお茶を飲む長い伝統の始まりで、ロイヤルブレックファーストは300年にわたり、英国民の愛する最高級のブレンド紅茶となっています。
21世紀になってからも東インド会社からロイヤルブレックファーストを販売することにこだわりが感じられますね。
お値段は、20ティーバッグ入タイプがおよそ1,000円です。
使われている茶葉のクオリティがいいので、妥当な価格だと思います。
缶タイプは缶の分だけややお高いですが、内容量は同じようです。
東インド会社 ロイヤルブレックファストを実際に飲んでみた様子
前置きが長くなりましたが、そろそろ実際に淹れてみましょう!
推奨条件は、ティーバッグ1つあたり熱湯200ml・蒸らし時間は3〜4分となっています。
まずはストレートで飲みたいので、3分経った時点でカップに1杯分を注ぎ、残りは抽出し続けて後ほどミルクティーにします。
今回購入したのはティーバッグタイプ。イギリスのメーカーには珍しく、しっかり個包装になっています。これはお土産品としての需要もありそうですね。紐部分が長いのがイギリスらしいです。
使われている茶葉の産地はインド・アッサムのみ。日本代理店の説明によると、アッサムのOPとスリランカのOPが使われているそうです。
詳細は不明ですが、個包装の袋を開けた時点から華やかなルフナを思わせる金芽の甘い香りが漂ってきます。この甘みがブレンドの主軸になっていそうです。
芽を活かしていそうですが青臭さなどはなく、どっしりした作りのようですね。ティーバッグタイプでも「ロイヤル」らしい品質の良い茶葉を使っていることが伺えます。
3分待ってカップに注いだ様子がこちらです。
しっかりと黒っぽい水色ですが、使われている茶葉が大きめだからか見た目から想像するような強い渋みはありません。
3分抽出時のストレートでは特にメロウなルフナを思わせる豊かな甘みがあります。代理店の紹介どおり、インドっぽさ(アッサムなど)はあまり感じませんでした。
後口には僅かに収斂する渋みが残りますが、ごく軽やかで口残りしすぎない印象です。
味わいとリンクする華やかさとモルティさの混じった香りが顕著に出ています。とくに、鼻抜けには林檎の蜜を思わせる花香・蜜香が強く感じられました。
長めに抽出したものも飲んでみましたが、味わいのバランスは崩れておらず、濃くなっても強い渋みは出ていませんでした。差し湯しながら飲むことができそうです。
ミルクティーにしてみた
ミルクを入れると、油脂の重みに負けるのか華やかさは目立たなくなる印象です。時間を置いてもあまり渋くならないのですが、元が濃いめのブレンドなのでそこそこ重めのミルクになら耐えられそうです。後口には全体に感じたようなメロウな甘み、花香が感じられました。
D1やCTCの茶葉ほど濃くなく、キレのある渋みもないので、ミルクティーとしてはややメリハリに欠ける印象があります。穏やかなタイプが好きな方にはおすすめできそうです。
東インド会社 ロイヤルブレックファストの味わいの感想
それでは、東インド会社 ロイヤルブレックファストついて、ポイント別の感想です。
渋み ★★★☆☆
フラワリー★★★★☆
重厚感 ★★★★☆
甘み ★★★★★
水色から想像するよりは軽くて甘やかで、OPらしいしっとりとした華やかな雰囲気があるブレンドです。香りだけでなくボディがしっかりありますし、濃い甘みのおかげで渋くないのに飲みごたえが感じられます。
ラベルではインド・スリランカとなっていますが、ミルクティーに好適なアッサムの渋みはあまり感じられませんでした。時間を置いてもあまり渋くなっていなかったので、どちらかというと穏やかなルフナやキャンディのような甘みがお好きな方向けかな?と思いました。
全体としては会社のネーミングに乗っかっただけではない、たしかなブレンドの腕が感じられる味わいでした。日本国内のティーバッグ紅茶とは明らかにブレンドの方向が異なっていて、体験としても満足できました。
東インド会社 ロイヤルブレックファストのおすすめの楽しみ方
個人的な好みですが、ブレンドの特徴を味わうのならストレートのほうがいいのかな?と感じました。
もともと香りに秀でたOPタイプを使用しているようですし、ストレートで飲んだときもクオリティの高い金芽の香り、花香・蜜香が強く香っていました。
こうした香りはミルクのような油脂を入れるとどうしても覆い隠されてしまいます。
後口からも上品に香ってはきますが、この”ロイヤル”な雰囲気を楽しむならストレートのほうが楽しめそうですよね。
全体としてキレのある強い渋みではないので、バターを使った焼き菓子のなかでも少し軽めのものを連想しました。フィナンシェやクッキー程度なら、お互いを引き立ててくれそうです。
終わりに
復活した背景などを知ると、知名度のある東インド会社の名前に反して新興の会社なので「あれっ?歴史はあまり関係ないの?」とモヤモヤしてしまいそうですよね。私もお土産用かな?なんて思いつつ、あまり期待せず購入してみたのですが、飲んでみるととてもイギリスらしい味わいのブレンドです。飲む前と後で評価がかなり変わりました。
とくに、ティーバッグでこういった本格的な紅茶の甘みを楽しめるブレンドはなかなかありません。個包装なので普段遣いにも旅行用にも使いやすそうなのがいいですね。
ストレートでもミルクでもおいしく飲める紅茶として、気になっている方にもおすすめできそうなクオリティでした。