桐木の無煙正山小種(ラプサンスーチョン)を飲んでみた

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こんにちは、銀猫です。

今日は中国の紅茶「正山小種」をご紹介します。
紅茶をよく飲む方には、正山小種よりもラプサンスーチョンという呼び名のほうがピンとくるかもしれませんね。
正山小種は紅茶の起源とも言われているので、ちょっと特別な存在です。

ラプサンスーチョンは「匂いがきつい」「正露丸みたい」などの噂によって有名になりました。
今回は正山小種発祥の地、桐木で作られた無煙タイプの正山小種をご紹介します。
昔、燻香の強いタイプを飲んでちょっと嫌なイメージがついてしまった方も、ぜひ参考にしてみてください。

正山小種って?

正山小種は福建省武夷山市桐木で作られている紅茶です。
武夷山は烏龍茶の一種、岩茶の生産で有名な場所でもあります。
「正山」は武夷山のことを指し、小種は茶樹の種類のことを指しているようです。

正山小種は紅茶の起源とも言われているため、インドやスリランカの紅茶をメインに飲んでいる方も「ラプサンスーチョン」「ボヒー茶」という名前でご存知かもしれませんね。

 

また、正山小種についてはWikipediaに書いてあることを鵜呑みにしないでください。
間違った情報が含まれており、私も以前その情報を元にして実験(!)をしようとしたところ、Twitterで専門家の方に間違いを指摘していただきました。

たとえば出だしに書かれている「紅茶の茶葉を松葉で燻して着香した」の部分は明確に間違っているようです。
実際には、地元で身近な馬尾松の薪材を使って乾燥工程を行っていることから、茶葉が煙を吸い込み、独特の匂いがついていきます。

現在流通している正山小種

現在流通している正山小種にはさまざまなタイプがあり、いずれも日本で購入できます。
特徴別にざっと整理してみました。

  1. 桐木以外でつくられた安価な正山小種……桐木(正山小種発祥の地)の在来品種や伝統製法で作られていない。他の産地の安い茶葉を仕入れ、他の地域でつくっている。できあがった茶葉にあとから燻煙を行っていることもある。外山小種と呼ばれる。
  2. 桐木の燻煙タイプの正山小種……松材を使用する乾燥工程で特有の香りがついた燻煙正山小種。これが伝統型。環境や茶師への負担が大きい割に燻煙された香りは消費者にウケないため、生産量は減っている。(文化保存・技術継承の面から作られてはいる)
  3. 桐木の無煙タイプの正山小種……在来品種の茶葉・伝統製法で作るが、乾燥工程に馬尾松を使わない。あとから追加でスモークすることもない。

こういった状況を踏まえると、Wikipediaの説明にある「紅茶の茶葉を松葉で燻して着香した」は、外山小種の生産方法の説明に近いのかな、と感じます。
ただし、その場合も松葉でスモークするか?と言われると(効率が悪いため)それはなさそうですね。

コストの関係から、2の燻煙タイプの桐木の正山小種を体験しようとして価格の安い茶葉を買うと、1のあとからスモークされた安価な外山小種を掴むことになると思われます。
1は香りがきついだけでなく、原料となった茶葉そのものの質が悪いこともあるため、正山小種自体に嫌なイメージを持ちやすそうですね。

いずれの場合も、信頼できるお茶屋さんから購入するのがおすすめです。

無煙タイプ

今回私が紹介するのは、3の「桐木の無煙の正山小種」。
正露丸みたい!と言われやすい燻香が控えめで、飲みやすいタイプです。
無煙タイプが作られ、日本国内でも見かけるようになった背景には、

  • 産地周辺が自然保護区に指定された=昔ながらの馬尾松の薪材を確保しにくい
  • 燻煙された香りが不人気&作る人への負担が大きい(煙を吸い込む、目にダメージなど)
  • 同産地の金駿眉(後述)が流行→似たテイストに寄せた

など複数の要因があるようです。

中国茶について知りたいときは

とはいえ、紅茶の本を見てみても、中国紅茶について書かれていないことが多いのが現状です。
手元にある初心者向けの紅茶本を確認してみましたが、キームンのことは書いてあるものの、正山小種への言及はありませんでした。

お茶の情報については、今回のようにWikipedia情報が間違っていることや、最新の情報にアップデートされていないことがあります。
中国茶について概要を知りたい場合、中国茶情報局さんなど専門のサイトで検索するのがおすすめです。

例)
正山小種
https://cttea.info/wordbank/zhengshan_xiaozhong

製法などの紹介がある動画

CCTV茶叶之路より 「紅茶の故郷」
https://tv.cctv.com/2012/12/10/VIDE1355151764583157.shtml
国営放送のテレビ局、CCTVが制作しているお茶番組です。
この第10話は桐木の様子や正山小種の作り方が紹介されています。
正山小種の乾燥工程に使われる青楼という建物も映っているので、ぜひ見てみてください。

桐木の正山小種を飲んでみよう!

今回購入したのは、武夷山内に茶区をお持ちの皇御茗茶葉さんの正山小種です。
紅茶(正山小種)発祥の地である桐木の在来品種、老叢(樹齢が古い茶樹)から摘まれた茶葉を、無煙タイプで仕上げています。
日本国内でも無煙タイプの方が人気があり見かけることも増えたため、現代のスタンダードな正山小種といえそうです。

茶葉はこんな感じ。大ぶりで硬めの質感です。色も均一ですね。
中国の紅茶で茶葉が大振りなものは、煎を重ねることによる風味の変化も醍醐味、と思うので蓋碗でさっと淹れていきます。


こうなりました。

とろりとした花や桃のような瑞々しいフルーツを連想する香り。温度が下がっていくに連れてカカオのような木質の香りが強まります。
カカオは口残りにも感じられ、ウッディな苦味の印象へとつながっていますね。

香りの印象は「紅茶」というよりも武夷山の岩茶のよう。品種や製法になにか共通点があるのかな、と感じます。
味わいは、ぎゅっとした甘みが詰まった金駿眉にも似ていて、チョコレートやザラメを思わせる雰囲気です。

燻煙タイプではないので、「正露丸みたい」といわれるきつい香りはありませんね。

中国紅茶の詳しい紹介がある書籍

この記事の中盤でも触れましたが、
インド・スリランカ系の紅茶について詳しい解説がある本でも、中国紅茶についてはあまり書かれていない…ということがありますよね。

かといって、中国茶に関する本を開いてみても、烏龍茶や緑茶の情報ばかりで紅茶について思ったような情報が得られない。

インドやスリランカのお茶がきっかけでお茶好きになった方も、中国紅茶を橋渡し役としてさらにお茶の世界を広げられそうなのに、ふわっとしかわからなくて行き来しにくい…という状況があると思います。

そんな方には、

  • 中国茶に関する比較的新しい本
  • 紅茶に関する項目を大きくとってくれている

という条件が揃っている、今間智子さんの「中国茶の教科書」がおすすめです。

紅茶に関してはアッサム系の茶葉でつくられた「滇紅」、浙江省の人気茶「九曲紅梅」など各地方の特色あるお茶を含めた18種類が紹介されています。
今回お話した正山小種の無煙バージョン、燻煙バージョン、そして紅茶好きさんに広く知られている祁門(キームン)紅茶も掲載されていますよ。

掲載されている種類が豊富なだけでなく、

  • 中国国内のどこの産地か
  • 風味の特徴は?
  • 加工方法は?
  • 歴史的な経緯は?

ということが詳しく解説されており、新規開拓にも大いに役立ちそうです。
また、中国国内で一大ブームとなった金駿眉のお話にも大きくページ数を割いてくれているので、紅茶ファンは必見ですよ!

 

全体の雰囲気やおすすめポイントについては下記の記事でより詳しくお話しています。
中国茶全体に興味がある!という方も、ぜひ参考にしてみてください。
中国茶の教科書を初心者が買って読んだ感想 こんな人におすすめ
https://teacierge.com/chinatea-textbook/

 

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